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Artist Statement:

色彩(あるいは光の波長)を束ねるように



“多様な色彩が「ひとまとまり」に見える” という私の作品の特徴は、2016年に開催したM画廊の個展でも、はっきりと辿ることができます。「何が門田の作品をこれほどにわかりにくく、魅力的にしているのか」。これは美術批評家の三井知行さんが執筆した、私の第一冊目のM画廊作品集のタイトルで、私の作風の変化と絵画の多義性への興味に可能性が潜在していると、示唆いただきました。

時を経て、軽井沢のセゾン現代美術館や、大阪のTEZUKAYAMA GALLERYの個展・グループ展やアートフェアなど、いくつかの展示を終えて、2019年の秋にニューヨークのリンカーンセンターで、「KADOTA」というタイトルの海外で初めての個展を開催しました。Cy Twomblyの甥にあたるコーディさんが中心となって開催してくれた一晩限りのプライベートな展示でしたが、彼のコレクターの仲間たちや、MoMAのヤングパトロンも招いた大変貴重な機会を私に与えてくれて、その夜、彼は展示した12点の作品に目を通し、私を招聘した理由を次のように説明してくれました。「門田の作品は多色だが、一つの色彩の概念としてまとめられている(“Kadota’s pieces are polychromatic but come together as a single, chromatic concept.”)」と。

小さな頃から多動の気があって、誤解も多い中で絵を描いてきた私でしたが、「君はまとまりがない中でも、ちゃんとまとまっているよ」と、存在意義を認めてもらえ、これまでの私の要素も全て一つになったように思えた瞬間でした。

この海を越えた出来事に続いて、帰国後、M 画廊の三村さんに、この報告を兼ねてお会いした帰りに、偶然、足利市立美術館で 「安野光雅」展が開催されていました。安野さんは私の名前の由来にもなった方で、幼い頃からその作品の多くに親しみ、私にとって欠かすことができない存在です。その代表作、「ふしぎなえ」の説明の一節に、“ 部分を見ればいいけど、全体を見ると理屈に合わない「ふしぎなえ」トポロジー ” と、書かれていて、かつての三井さんの言葉や、先日のコーディさんの評価とも結びつき、“ 部分と全体が不一致でありながらも統合している ” という捉え方が、実は私の制作のプロセスや本質にも通じていることに気が付きました。

私は、日本の伝統や、自分自身の感情や記憶の揺らぎを、色彩や筆致に置き換え、制限や枠組みを超えるような表現の可能性に挑戦しています。そのような作品は一見、わかりにくいのかもしれませんが、その先入観を越えて、価値や意味を得ることが出来たとき、これまで無かった考え方や、新しい展望も見えてくる確信があり、私はそこに、美術の本来の面白さや、役割があると考えているからです。

「ふしぎ」の中に、様々な発見が詰まっている安野さんの絵本のように、捉えきれないほどの魅力に満ちた美術の中で、作品との出会いを愉しんでいます。


門田光雅





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