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SOUL NEXUS


祥晴庵 (2025年7月・ 京都)


























「SOUL NEXUS」

「能面は、決して【mask(覆うもの)】ではないという、演者の内側を表出するもの、だから、【面(おもて)】と呼ばれる」。これは今年の3月、京都観世会館で開催された河村晴久さんの誓願寺のご公演を観た後、お会いした際に、このようなご説明をいただき感銘を受けた。また、ご公演のときにお召しになる装束に施されている、装飾の特徴についても教えていただき、「一見すると同じ模様の【型】が、ただ反復しているものに見えるが、実は使用する【色彩】が少しずつズレていて、それが【広がり】を表現している」とのことで、実際のお召し物を拝見させていただくと、確かに部分によって色の配置が絶妙に異なっており、非常に多様なバリエーションが、その意匠性の中に隠れていることに気付く。限られた色数や定まった型の中でも、そこに僅かな差や変化を与えることで、様々な組み合わせを嗜(たしな)むことができる。このプロセスは、きっと「能」という極められた様式美の根幹にも通じるもので、私たちの知覚の及ばない世界の【広がり】に結びつくための、重要な手掛かりの一つを河村さんからご教授いただいたように思えた。

今回、その河村さんの稽古場である「祥晴庵」で、展示をさせていただく運びとなった。私にとっては、普段、展示をする空間とは、まるで異なる神聖な場で、作品がどのように立ち振る舞いを見せるのか、全く未知数な試みであり、河村さんにとっても、重要な場所を解放いただき、またご自身も伝統と新しい挑戦の双方に向き合うという、とても大きなご決断であったと思う。大袈裟にではなく、21世紀における伝統や文化の在り方やその意味を問う、そのような重責を担う機会だと感じている。

伝統性と現代性は、一見、相容れないもののように思えるかもしれないが、伝統芸能も現代美術も、「一般的には難解なことが多い」という点において共通している、と言えるのかもしれない。現代美術においては、【文脈】という美術の歴史の流れを最低限、押さえておく必要があって、この共通言語を知ることで、作品の意図や新しさを理解できるような仕組みになっている。英語が喋れないと海外で苦労することと同じで、おそらく能の世界においても、その言語が公にされていないというような、同様の壁があるのではないか。ただそれは、そのどちらも、神がかったことや、精神や魂のこと、あるいは人間の新しい感覚の拡張の問題を扱っていて、その難解さは、人が安易に足を踏み入れることのできない場所に、命を懸けて向き合っている、という証拠のように思う。

「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている」という有名な言葉があるが、目に見えない【広がり】と向き合うことは、その表現者であれ、鑑賞者であれ、その資質がきっと常に問われる。制作や展示をすることも、自身の在り方を問う、そのような機会だ。今回、このような多大なチャンスを与えてくださった河村さんへの深い感謝と共に、伝統と現代の両方に対峙できるという、いつも以上の期待と緊張感に、気持ちがかなり高まっている。


2025年6月 門田光雅





鈿女 (UZUME)
2025 Acrylic and Carborundum on cotton
1457×896mm






猿田彦 (SARUTAHIKO)
2025 Acrylic and Carborundum on cotton
1457×896mm










頼政 (YORIMASA)
2025 Acrylic and Carborundum on cotton
730×608mm




誓願寺 (SEIGANJI)
2025 Acrylic and Carborundum on cotton
730×608mm





屋島 (YASHIMA)
2025 Acrylic and Carborundum on cotton
730×608mm









pythagoras(prototype)
2025 Acrylic and Carborundum on Cotton with frame
770×850mm








面 (OMOTE)
2025 Acrylic and Carborundum on Cotton
804×804mm










古道 (KODO)
2025 Acrylic and Carborundum on Cotton
610×333mm

うたかた (UTAKATA)
2025 Acrylic on Cotton
534×333mm
Private Collection










影向 (YOUGOU)
2025 Acrylic and Carborundum on Cotton 1620×970mm
影向2 (YOUGOU2)
2025 Acrylic and Carborundum on Cotton 1620×970mm







影向3 (YOUGOU3)
2025 Acrylic and Carborundum on Cotton 1940×1303mm







影向4 (YOUGOU4)
2025 Acrylic and Carborundum on Cotton 1940×1303mm









刹那 (SETSUNA)
2025 Acrylic and Carborundum on Cotton 333×220mm
Private Collection









諸行 (SHOGYOU)
2025 Acrylic and Carborundum on cotton 610×457mm
Private Collection
無常 (MUJOU)
2025 Acrylic and Carborundum on cotton 610×457mm
Private Collection









初心 (SYOSHIN)
2025 Acrylic and Carborundum on cotton 652×333mm
blue moment
2025 Acrylic and Carborundum on Cotton 910×606mm










秘花(HIMEBANA)
2024 Acrylic and Carborundum on Cotton with frame 227×227mm
Private Collection










Aufheben
2024 - 2025 Acrylic and Carborundum on Cotton with frame
823×823mm










鉾楯 34 (HOKOTATE 34)
2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm







Z
2024 Acrylic and Carborundumon cotton 82×80mm

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