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VOCA 2011

現代美術の展望-新しい平面の作家たち

上野の森美術館(2011年3月・東京)

「抽象」という表現に、むしろ自身の在り方が見えてくる制作スタイルが、美術ジャーナリストの名古屋覚さんの評価を得て、上野の森美術館で開催されたグループ展に推薦されました。私は、自身の感情や記憶の揺らぎを、多面的な筆致に捉えて描いた作品を出品し、名古屋氏から「この世で絵の具と画布が初めて出合った、原初の歓喜を塗り込めたようだ。注目すべきは、それでも一筆一筆が画家の統率下にある」とコメントをいただきました。しかし不運にも、この展示は、会期直前に、東日本大震災が発生し、展示会期が半分に短縮されてしまいました。



「いま、なぜ『具象』なの?」- 昨年のVOCA展シンポジウムの題。聴かなかったが、とぼけていると思う。 VOCAで具象が脚光を浴びるようになったのは2005年の日野之彦の大賞受賞以降だ。以前はむしろ抽象ないし半抽象のための展覧会だった。2000年代半ばから若手画家は具象に走る。それは彼らの内発的な動きだったか?海外の具象画家が紹介されたのも一因かもしれない。が、「具象を描けばVOCAに」と考えた人もいるのでは。なぜ具象? VOCAが具象をひいきするから、かもしれないのだ。迷える若い画家に「抽象でもいいんだよ」というメッセージを送るのも、VOCAの役割である。出来はいまひとつでも抽象の作品にあえて賞を出すことで、そうしたメッセージを世の画家たちに伝えることができる。ある価値観を示すことで、人を動かす。政治の「王道」だ。選考委員は“美術政治"の権力者である。権力は社会に必要で、良きものだ。適正に行使してほしい。「具象」の流れにさおさすばかりでは、選考の意味がない。

さて、まだまだ露出の機会に恵まれない門田光雅の絵画。「抽象」といえば古くさくもあるしかし、走り、うねり、あふれ、時に形を暗示する、筆触と色彩のあやはどうだ。この世で絵の具と画布が初めて出合った、原初の歓喜を塗り込めたようだ。注目すべきは、それでも一筆一筆が画家の統率下にあること。そして、虚心に向き合えば、画面の隅々まで新鮮だ。


名古屋 覚 (美術ジャーナリスト)




courtesy:上野の森美術館






氷山 (HYOUZAN)
2010 Acrylic and Carborundum on cotton
2300×1700mm




凍てつく川 (ITETSUKU KAWA)
2010 Acrylic and Carborundum on cotton
1167×910mm
Private Collection






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