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SOUL NEXUS
祥晴庵 (2025年7月・ 京都)










「SOUL NEXUS」
「能面は、決して【mask(覆うもの)】ではないという、演者の内側を表出するもの、だから、【面(おもて)】と呼ばれる」。これは今年の3月、京都観世会館で開催された河村晴久さんの誓願寺のご公演を観た後、お会いした際に、このようなご説明をいただき感銘を受けた。また、ご公演のときにお召しになる装束に施されている、装飾の特徴についても教えていただき、「一見すると同じ模様の【型】が、ただ反復しているものに見えるが、実は使用する【色彩】が少しずつズレていて、それが【広がり】を表現している」とのことで、実際のお召し物を拝見させていただくと、確かに部分によって色の配置が絶妙に異なっており、非常に多様なバリエーションが、その意匠性の中に隠れていることに気付く。限られた色数や定まった型の中でも、そこに僅かな差や変化を与えることで、様々な組み合わせを嗜(たしな)むことができる。このプロセスは、きっと「能」という極められた様式美の根幹にも通じるもので、私たちの知覚の及ばない世界の【広がり】に結びつくための、重要な手掛かりの一つを河村さんからご教授いただいたように思えた。
今回、その河村さんの稽古場である「祥晴庵」で、展示をさせていただく運びとなった。私にとっては、普段、展示をする空間とは、まるで異なる神聖な場で、作品がどのように立ち振る舞いを見せるのか、全く未知数な試みであり、河村さんにとっても、重要な場所を解放いただき、またご自身も伝統と新しい挑戦の双方に向き合うという、とても大きなご決断であったと思う。大袈裟にではなく、21世紀における伝統や文化の在り方やその意味を問う、そのような重責を担う機会だと感じている。
伝統性と現代性は、一見、相容れないもののように思えるかもしれないが、伝統芸能も現代美術も、「一般的には難解なことが多い」という点において共通している、と言えるのかもしれない。現代美術においては、【文脈】という美術の歴史の流れを最低限、押さえておく必要があって、この共通言語を知ることで、作品の意図や新しさを理解できるような仕組みになっている。英語が喋れないと海外で苦労することと同じで、おそらく能の世界においても、その言語が公にされていないというような、同様の壁があるのではないか。ただそれは、そのどちらも、神がかったことや、精神や魂のこと、あるいは人間の新しい感覚の拡張の問題を扱っていて、その難解さは、人が安易に足を踏み入れることのできない場所に、命を懸けて向き合っている、という証拠のように思う。
「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている」という有名な言葉があるが、目に見えない【広がり】と向き合うことは、その表現者であれ、鑑賞者であれ、その資質がきっと常に問われる。制作や展示をすることも、自身の在り方を問う、そのような機会だ。今回、このような多大なチャンスを与えてくださった河村さんへの深い感謝と共に、伝統と現代の両方に対峙できるという、いつも以上の期待と緊張感に、気持ちがかなり高まっている。
2025年6月 門田光雅

2025 Acrylic and Carborundum on cotton
1457×896mm

猿田彦 (SARUTAHIKO)
2025 Acrylic and Carborundum on cotton
1457×896mm

2025 Acrylic and Carborundum on cotton
730×608mm

2025 Acrylic and Carborundum on cotton
730×608mm

2025 Acrylic and Carborundum on cotton
730×608mm

2025 Acrylic and Carborundum on Cotton with frame
770×850mm

2025 Acrylic and Carborundum on Cotton
804×804mm

2025 Acrylic and Carborundum on Cotton
610×333mm

2025 Acrylic on Cotton
534×333mm
Private Collection

2025 Acrylic and Carborundum on Cotton 1620×970mm

2025 Acrylic and Carborundum on Cotton 1620×970mm

2025 Acrylic and Carborundum on Cotton 1940×1303mm

2025 Acrylic and Carborundum on Cotton 1940×1303mm

2025 Acrylic and Carborundum on Cotton 333×220mm

2025 Acrylic and Carborundum on cotton 610×457mm
Private Collection

2025 Acrylic and Carborundum on cotton 610×457mm
Private Collection

2025 Acrylic and Carborundum on cotton 652×333mm

2025 Acrylic and Carborundum on Cotton 910×606mm

秘花(HIMEBANA)
2024 Acrylic and Carborundum on Cotton with frame 227×227mm

2024 - 2025 Acrylic and Carborundum on Cotton with frame
823×823mm

2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm

2024 Acrylic and Carborundumon cotton 82×80mm
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Re-Color
アルフレックス リストア(2025年4月・ 東京)

2025年4月22日(火)~ 5月11日(日)
営業時間 11:00 -19:00
定休日 不定休
〒158-0094東京都世田谷区玉川1-14-1 二子玉川 蔦屋家電 2F
tel.03-5717-9222
︎アルフレックス website
道端に咲く小さな花の色から、前向きな気持ちをもらえたり、遠い日に見た海の色が褪せることなく、記憶の中で揺らいでいたり、色彩は、ありふれた日常の中にこそ、大切なものがあることに気付かせてくれます。
たった一つの色彩から多くの想像力が働いたり、あるいは逆に無数の色の組み合わせから、一つのイメージを思い浮かべられるということは、私たちは、いろいろな違いを受け入れたり、先入観を越えて結びつくこともできるという、証拠なのかもしれません。
また色彩は、調和や矛盾も共生しているものであるからこそ、私たちの見えない本質を探るためのヒントもそこにあるような感覚があります。
否定も肯定も等しく鬩ぎ合い響き合っているということ、またそれを幾度となく塗り重ねても、その正解や終わりが決してないということは、色彩が秘めている様々な可能性に、私たちがどのような覚悟で、どのように向き合うのかということを、むしろ問われているような気がしています。
2025年3月 門田光雅









2025 Acrylic and Carborundum on cotton
730×608mm
Private Collection

symphony 1
2025 Acrylic and Carborundum on cotton
534×411mm

symphony 2
2025 Acrylic and Carborundum on cotton
534×411mm

symphony 3
2025 Acrylic and Carborundum on cotton
534×414mm

symphony 4
2025 Acrylic and Carborundum on cotton
535×412mm

symphony 5
2025 Acrylic and Carborundum on cotton
535×411mm

symphony 6
2025 Acrylic and Carborundum on cotton
535×412mm

symphony 7
2025 Acrylic and Carborundum on cotton
534×411mm

symphony 8
2025 Acrylic and Carborundum on cotton
536×412mm

symphony 9
2025 Acrylic and Carborundum on cotton
535×412mm

harmony
2025 Acrylic and Carborundum on cotton
1005×805mm
Private Collection

2025 Acrylic and Carborundum on cotton
910×730mm

2025 Acrylic and Carborundum on cotton
910×730mm

2024 - 2025 Acrylic and Carborundum on Cotton with frame 823×823mm (鉾楯 1~30 / 115×100mm each)

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鉾楯 34(HOKO/TATE 34) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

camphor 2024 Acrylic and Carborundum on cotton 1943×1620mm |

2024 Acrylic and Carborundum on cotton 223×223mm
Private Collection

光線 (KOUSEN)
2024 Acrylic and Carborundum on cotton 643×535mm

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2022 Acrylic on Cotton 1305×636mm

2021 Acrylic and Carborundum on cotton 730×608mm
Private Collection
2020 Acrylic and Carborundum on cotton 654×531mm

2019 Acrylic on cotton
412×243mm

2019 Acrylic on cotton
459×275mm

2017 Acrylic and Carborundum on cotton 1076×307mm

2007 Acrylic and Carborundum on cotton 342×243mm

Utopia 2007 Acrylic on cotton 339×244 mm |
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カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ
ポーラ美術館(2024年12月・ 箱根)
イントロダクションムービー
[コメント出演協力]門田光雅、山田航平、川人綾、小泉智貴(Tomo Koizumi)
︎ポーラ美術館 website

杉本博司、クロード・モネ、ジョルジュ・スーラ、ロベール・ドローネー、アンリ・マティス、ピエール・ボナール、ヘレン・フランケンサーラー、モーリス・ルイス、ケネス・ノーランド、ドナルド・ジャッド、ブリジット・ライリー、ゲルハルト・リヒター、ベルナール・フリズ、ヴォルフガング・ティルマンス、グオリャン・タン、杉本博司、桑山忠明、前田信明、坂本夏子、山口歴、流麻二果、門田光雅、山田航平、川人綾、山本太郎、草間彌生ほか
会期
2024年12月14日(土)~ 2025年5月18日(日) 会期中無休
会場
ポーラ美術館 展示室1,2,3
主催
公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館
ポーラ美術館
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山 1285
︎ポーラ美術館 website
明るい色と暗い色、好きな色、苦手な色など、人の数と色彩の数だけ無数の捉え方があるように、「色彩」は、私たちという多彩な本質を探るための必要不可欠な手掛かりであるような気がしています。
かつてゲーテも「色彩は光のふるまいであり、苦しみである」 というようなことを述べていて、遥か昔からその神秘性と複雑さを窺い知ることができます。私も自身の内側にある言語化が難しかったり、解きほぐすことの出来ない感覚を、この色彩というものに置き換えることで絵画を描いています。それは手探りの中で進むしかない試みで、正解がないものですが、むしろその困難が自身の視野を広げるための糧となるような感触があります。
今日では「色味の中に感じる広がり」や「部分と全体の不一致と統合」といった色彩を巡る矛盾をヒントにした表現の探求を進めています。私たちの不可解な本質というものが、そのような逆境や葛藤を乗り越えた先に存在しているような気がするからです。
2024年12月 門田光雅











untitled 2016 Acrylic and Carborundum on cotton 2594×1940mm Private Collection |

surf 1
2017 Acrylic and Carborundum on cotton
1620×971mm
Private Collection
today 2021 Acrylic and Carborundum on cotton 1622×972mm Private Collection |
tomorrow 2021 Acrylic and Carborundum on cotton 1622×2275mm Private Collection |

Logos
2023 Acrylic and Carborundum on Cotton
1941×2594mm


Dice(monochrome) 2024 mixed media W.1100×D.970×H.660mm Private Collection |


Dice(polychrome) 2024 Acrylic on cotton (mixed media) W.1100×D.970×H.660mm Private Collection |
「Dice(monochrome・polychrome)」について
ARFLEX JAPANに協賛をいただき、MARENCO(マレンコチェア)を立体キャンバスに見立てて描いたコラボレーション作品です。
私たちは、白や黒の中に様々な色味を感じたり、あるいは散らばって見える色彩の中に、不思議なまとまりを感じたりすることがあります。そのような色の関係を意識して制作しました。物事には、先入観を越えた多くの側面や違い、可能性が含まれていることを、ダイス・モノクローム(白黒)とダイス・ポリクローム(多色)というタイトルに込めています。またサイコロを振るとき、出る目が決まっていないように、作品の色々な捉え方を楽しんでもらいたいです。
2024年12月 門田光雅
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神はサイコロを振らない
LIME RESORT HAKONE (2024年12月・ 箱根)

2024年12月14日(土)〜 2025年5月18日(日)
◾宿泊のお客様は、滞在中ご覧いただけます。
◾宿泊のないお客様は、ご覧いただく日時に限りがございますので、ライムリゾート箱根の公式インスタグラムにてご確認ください。
https://www.instagram.com/limeresorthakone
ライムリゾート箱根は、完全貸切可能な合宿型の滞在を提供しております。貸切がない日程はホテルとして営業しておりますので、個人での宿泊や日帰り利用も可能です。(※レストランはございません)
ライムリゾート箱根
2500631 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1246-845
■ご予約・お問い合わせ先
TEL 0460-83-8272
︎LIME RESORT HAKONE website
︎プレスリリース
人は「多面体」であると、よく例えられる。良い面、悪い面、様々な面が、組み合わさってできていて、決して一つの面だけで捉えることはできない。
サイコロを振る時、その個数が増えれば増えるほど、同じ目を出すことが、どんどん難しくなっていくように、人の数と、その側面の数だけ、今日の複雑さがあるのかもしれない。同じ立場や、同じ目に合ってみなければ、人は、なかなかその苦悩を理解することは難しい。出生を変えることは不可能であり、男性が子供を産むことは叶わないというような、抗うことが出来ない現実もある。
かつてニュートンが、プリズムによって光の屈折率を確かめて、音楽の音階に対応して虹の7色を定めたというエピソードがあるが、不可解な多面体である私たちの本質を、もし光の波長のように透過させるようなことができたなら、もっと正確な検証や観測をすることができるのだろうか。またその時は、音楽の調べのように美しい旋律として、奏でられるようなものであると信じたい。
芸術家は、そのような滑稽で盲信のような方法の一つとして、作品を作り続けることで、人間の内に秘める多面性を探っている。それは、サイコロを無意味に振り続けるような挑戦だ。ただ時折、その出鱈目が、言語や国境、立ち位置を超えて人の心を揺さぶることが、美術というものの不思議であり、真髄でもあるように思う。
カエサルは「賽は投げられた」と言い、アインシュタインも「神はサイコロを振らない」という言葉を残している。歴史上の偉人たちもきっと、随分と運命や宿命に翻弄され、葛藤し、挫折する中でも、挑み続けていたに違いない。
2024年11月 門田光雅













2024 Acrylic and Carborundum on Cotton
1622×1301mm

2023 Acrylic and Carborundum on Cotton
1305×803mm

2023 Acrylic and Carborundum on Cotton
1457×893mm
Private Collection

Do-Re-Mi (Doe)
2024
Acrylic and Carborundum on Cotton 185×181mm
Private Collection

Do-Re-Mi (Ray)
2024
Acrylic and Carborundum on Cotton 185×181mm
Private Collection

Do-Re-Mi (Me)
2024
Acrylic and Carborundum on Cotton 185×181mm
Private Collection

Do-Re-Mi (Far)
2024
Acrylic and Carborundum on Cotton 185×181mm
Private Collection

Do-Re-Mi (Sew)
2024
Acrylic and Carborundum on Cotton 185×181mm
Private Collection

Do-Re-Mi (La)
2024
Acrylic and Carborundum on Cotton 185×181mm
Private Collection

Do-Re-Mi (Tea)
2024
Acrylic and Carborundum on Cotton 185×181mm
Private Collection

Octopus’s Gargen Ⅱ 2022 Acrylic and Carborundum on Cotton 543×541mm |
secret 2020 Acrylic and Carborundum on cotton 1940×1305mm |

2019 Acrylic and Carborundum on cotton
1622×971mm

多面体 41 (TAMENTAI 41) 2021 Acrylic and Carborundum on cotton 553×435mm |

多面体 42 (TAMENTAI 42) 2021 Acrylic and Carborundum on cotton 551×551mm Private Collection |

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闇の中に輝く光(YAMINO NAKANI KAGAYAKU HIKARI) 2005 Acrylic and Carborundum on cotton 2400×1400mm |

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innocence
2023 Acrylic and Carborundum on Cotton
610×456mm

ALPHABET 2024 Acrylic and Carborundum on cotton 254×654mm Private Collection |

D 2024 Acrylic and Carborundum on cotton 82×80mm |

F 2024 Acrylic and Carborundum on cotton 82×80mm |

L 2024 Acrylic and Carborundum on cotton 82×80mm Private Collection |

Z 2024 Acrylic and Carborundum on cotton 82×80mm |

O 2024 Acrylic and Carborundum on cotton 82×80mm Private Collection |

X 2024 Acrylic and Carborundum on cotton 82×80mm |

V 2024 Acrylic and Carborundum on cotton 82×80mm |

Q 2024 Acrylic and Carborundum on cotton 82×80mm |

last
2023 Acrylic and Carborundum on Cotton
730×610mm
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AS ALWAYS
TEZUKAYAMA GALLERY (2024年11月・大阪)
︎ 360-degree camera 1
︎ 360-degree camera 2








私が幼少の頃に住んでいた静岡の家には、強風によって倒れて根が剥き出しになっても枯れずにいた大きな楠の木がありました。剥き出しになったその楠の根は、幼かった私には切り立った崖のように見え、実家は海のそばであったため、たくさんの蟹たちがそこに巣穴を作り群れていたことを今でも覚えています。
普通、地面の下にある木の根の状態やその存在を把握することなどはできないように、私たちが日常の中で見る事ができるものは、非常に限られているように思います。それは生きていく上で、誰もが自身の過去の出来事や生い立ちなど、全てを語ることなどできない感覚と似ていて、多様性が語られる今日の中でも、その水面下には木の根のように複雑に入り組んで可視化されていないことが、まだまだたくさんあるように思います。
この楠の木は、倒れた無様な格好を晒しながらも、それでもなお毅然と生き抜いてました。剥き出しとなった根は、むしろ蟹たちの格好の隠れ家となり、新たな役割を担っていました。
当たり前に佇むことすら叶わない「当たり前」があることを私は知っています。耐え難い苦しみや、抜け出しようのない不幸を、受け入れることは簡単ではありません。ただそれでも、何かしらの意味と始まりがあること。全ての物事は、その捉え方によって変化することができる相対的なものであることを、私は幼い日に見たこの光景から学びました。
今日の美術も、デュシャンが男性用の小便器を横転させたことによって産声をあげたように、今まで見えていなかったものが見える瞬間はいつも、その根本が覆るときなのかもしれません。様々な葛藤と向き合い、色彩や筆致の絵画として、今日の制限や枠組みを越えるような表現の可能性を模索しています。 倒れることもまた、「いつもの」始まりであることを、私は知っています。
2024年8月 門田光雅
普通、地面の下にある木の根の状態やその存在を把握することなどはできないように、私たちが日常の中で見る事ができるものは、非常に限られているように思います。それは生きていく上で、誰もが自身の過去の出来事や生い立ちなど、全てを語ることなどできない感覚と似ていて、多様性が語られる今日の中でも、その水面下には木の根のように複雑に入り組んで可視化されていないことが、まだまだたくさんあるように思います。
この楠の木は、倒れた無様な格好を晒しながらも、それでもなお毅然と生き抜いてました。剥き出しとなった根は、むしろ蟹たちの格好の隠れ家となり、新たな役割を担っていました。
当たり前に佇むことすら叶わない「当たり前」があることを私は知っています。耐え難い苦しみや、抜け出しようのない不幸を、受け入れることは簡単ではありません。ただそれでも、何かしらの意味と始まりがあること。全ての物事は、その捉え方によって変化することができる相対的なものであることを、私は幼い日に見たこの光景から学びました。
今日の美術も、デュシャンが男性用の小便器を横転させたことによって産声をあげたように、今まで見えていなかったものが見える瞬間はいつも、その根本が覆るときなのかもしれません。様々な葛藤と向き合い、色彩や筆致の絵画として、今日の制限や枠組みを越えるような表現の可能性を模索しています。 倒れることもまた、「いつもの」始まりであることを、私は知っています。
2024年8月 門田光雅
always
2019 Acrylic and Carborundum on cotton
2273×1820mm
2019 Acrylic and Carborundum on cotton
2273×1820mm

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whirlwind 2 2023 Acrylic and Carborundum on Cotton 608×606mm |
![]() 2024 Acrylic on Cotton with frame 353×350mm (frame / 615×584mm) Private Collection |

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鉾楯 2(HOKO/TATE 2) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

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鉾楯 4(HOKO/TATE 4) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

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鉾楯 6(HOKO/TATE 6) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

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鉾楯 8(HOKO/TATE 8) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

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鉾楯 10(HOKO/TATE 10) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

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鉾楯 12(HOKO/TATE 12) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

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鉾楯 14(HOKO/TATE 14) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

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鉾楯 16(HOKO/TATE 16) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

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鉾楯 18(HOKO/TATE 18) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

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鉾楯 20(HOKO/TATE 20) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

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鉾楯 22(HOKO/TATE 22) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

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![]() 鉾楯 24(HOKO/TATE 24) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

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鉾楯 26(HOKO/TATE 26) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

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鉾楯 28(HOKO/TATE 28) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

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鉾楯 30(HOKO 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

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鉾楯 32(HOKO/TATE 32) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm Private Collection |

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鉾楯 34(HOKO/TATE 34) 2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 115×100mm |

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2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 173×173mm
Private Collection

2024 Acrylic and Carborundum on Cotton 223×223mm
Private Collection

the former
2024 Acrylic and Carborundum on Cotton
1306×803mm
Private Collection
2024 Acrylic and Carborundum on Cotton
1306×803mm
Private Collection

the latter
2024 Acrylic and Carborundum on Cotton
1306×803mm
2024 Acrylic and Carborundum on Cotton
1306×803mm

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11 colors 2015 Acrylic and Carborundum on cotton 1940×1620mm |

松喰 (MATSUHAMI) 2009 Acrylic and Carborundum on cotton 1620×1303 mm |

Utopia 2007 Acrylic on cotton 339×244 mm |
「根」と「デュシャン」
松葉 邦彦 (アートコレクター / 建築家)
寄稿の依頼があった数日後に別件で門田さんのアトリエを訪れたところ「AS ALWAYS」展に際して書いたというステートメントを出力して用意してくれていた。せっかくなのでその場で目を通したところ「根」と「デュシャン」について書かれていた。そしてこの2つが門田さんとの関係を語る上で重要なキーワードなのかもしれないと気づいたので、僕の視点から「根」と「デュシャン」ついて書いてみようと思う。
まず「根」についてだが、実はまさに「根」というタイトルが付けられた作品をコレクションしている。2010年に描かれた1m角程度の作品で、その名の通り根をモチーフとした作品であり、それはかつて門田さんが住んでいた家にあったものだという説明を受けたと記憶している。一目見た時から何か魅かれる作品だった。
「根」を描いた時期というのは門田さんが画家としてもがき苦しんでいた頃のようで、濃紺で描かれた刺々しく暗い根を見ていると当時抱えていた苦悩や苛立ちをダイレクトに感じ取ることができる。ただ一方で、背景の一部に塗られたピンクの明るさからは、その後手にすることになる飛躍や幸せを予見しているようにも感じられる。そして、その作品にかつて何者にもなれていないことに対して日々苛立ち、その環境から抜け出すために試行錯誤しながら過ごしていたかつての自分を重ね共感していた。だから強く魅かれ購入したのではないかと思っている。
門田さんとの出会いは今から8年前の2016年に遡る。当時表参道にあったSEZON ART GALLERYで開催されていた「STROKES」展を訪れ「line works 3」という作品を購入したのがきっかけだった。ギャラリーの壁面に飾られた多彩で力強い作品を目にした瞬間に購入を即決したことを今でもよく覚えている。ギャラリーでのアート作品の購入は初めてだったのだが、運命的な出会いによる衝撃と作品を買う際に得られる心地の良い高揚感を同時に味わった。その感覚が忘れられなくなってしまい、今日に至るまでアートコレクションを続けているのだと思う。
その後、門田さんとはアトリエの訪問や作品購入を定期的に行うなどアーティストとコレクターとしての友好関係を築くだけでなく、時には週に2〜3回と尋常ではない頻度で飲みに行くなど一人の友人としても親交を深めていくことになるのだが、2022年の春先に門田さんからアトリエ兼自宅の駐車スペースにカーポートを増築したいという相談を受けた。嬉しい話であり当然快諾し設計を進めて行ったのだが、増築が故に敷地境界と既存建物の間をトレースするような不整形な屋根を持つ建築になってしまった。
その屋根の形状自体はとても気に入っていたのだが、一つ大きな問題が発生した。一般的な建物であれば90°で梁が直交するのだが、不整形な屋根を保持するために各々1〜2°程度ズレて接合させる必要が出てきたのである。この僅かなズレは人の感覚では知覚するのが難しいレベルな上に、使用する部材が規格から外れるためコスト高になる。普通なら90°に補正して金額を下げて欲しいと言われてしまう内容だ。
ただ、アーティストの門田さんは違った。この僅かなズレを
「一見気付かないような、ほんの数度の角度のズレにも、むしろ手間や摩擦、見えないエネルギーが必要となる。これは人間や社会に置き換えても同じことが言えるのではないだろうか。大きな声にできないものや、説明が難しいものは、そのたった1度か2度の分かりにくい角度のズレに苛まれているのかもしれなくて、逆にほぼ、そのズレや違いがわからない分、苦しみが大きいのではないか。
私たちにはまだシェアできていない感覚がたくさんあって、そのことが今日の不寛容や、誹謗中傷などの大きな原因となっていると私は考えていて、そのような今日にまだ難解だったジレンマの可視化を、まさか経済の中に発見するとは思いも寄らなかった。」
(門田光雅「Two Angles」より引用)
と論じ、カーポートに建築とは異なる別の価値を見出したのである。
そのアーティスト然とした光景を目の当たりにした時に、この僅かなズレこそ「デュシャン」が「泉」において男性用便器に書き込んだ「R. Mutt 1917」のサインと同様に、対象となる物の文脈を全く違うものに転換することで新たな価値を提示しているのではないかと気づいた。まさに現代アートの真骨頂を見たのである。そして、その感銘を忘れないためにこのカーポートに「デュシャン」が用いた概念「Readymade」を引用しタイトルとして付けた。
元々、僕の中では「根」と「デュシャン」、すなわちカーポートは繋がっておらず別々の物だったのだが、今回門田さんが書いたステートメントによって2つが関連付けられた。それが今後どんな意味を持ち、どう広がっていくのかが楽しみでならない。ただ1点、門田さんが何故2つのキーワードをステートメントに用いたのか?が気になって仕方がない。そして、それを読んだ僕に何かを書かせたかったのか?それとも単なる僕の勘違いで長文を書いてしまったのか?
まあ、それは「AS ALWAYS」展を訪れればわかるかもしれないので、その時まで答え合わせはしないでおこうと思う。